佐藤るり官能小説
ドールスピーク
第2章 - 景子2
カオスにすら見える私の教室にも、確実に法というモノはあって、例えば私の生理というのがそれだ。文学部在学中にそれなりに色々なものに手を出したものの、即物的な興味は瞬間的なものでしかなく、生徒より一段高い場所で自尊心を守ろうとしたのだから、当たり前といえば当たり前なのだけど。教師として暮らし始めてから、私の世界は生徒より一段高い教壇に立っていられる、教室の中だけになり、そこで生徒たちと共有する法が私自身に向けられる審判の全てとなった。
横山という生徒を生理的に過剰に気にしだしたのは、彼が意識的にとも思えるほど頻繁に遅刻してやってくることが多くなってからだ。無論そこに象徴的な意味が存在しないわけはなく、遅刻をシグナルとして彼が私の審判に則って、そこに甘んじているのである。結局寄りかかりあうための法則だ。彼にとって私のような強い人間の指示が、自我を守るために必要なのと同じくらい、私にとって、彼のような弱い人間たちが必要なのだから。
象徴の後ろには法があってその後ろに私の生理があることはすでに述べた。私自身にとっては、生徒が遅刻してくることは極上の快楽なのである。
銀杏の黄色い種子が、アスファルトのアプローチにつけた黄色い痕跡も消えて久しい1月の新学期初日に、私は踏みしめる当てもなく下を向きながら、ひたすら下品な女子生徒の太ももの裏側を見て教室に向かって歩いていた。
例えば、どこぞのレディーズコミック漫画家が構築しようとした体系や、何故かパンツ売りに賭けていた社会学者が信じた体系は、彼女たちの間にもう微塵も存在していないのだと思う。替わりにあるのは、キャバクラで自らに値段をつけなければならないほどの貪欲な根性と、パッケージに張り付いた無機質な笑顔をビデオやで売りさばかれたがる消費されたい願望が、乱れて浮遊する混沌だけだ。
彼女たちが何も構築できていないのならば、彼女たちを食する立場の男子たちに何かを構築できるはずもない。だからせいぜい私がモラルを与えてあげよう。今日、おそらく横山を含めて数人の遅刻者がやってくるであろう。せいぜい彼らの律儀に対して、新年の祝福をもって祭り上げなければならない。正月だ。派手なほうがいい。

形式的な職員会議を無視するわけにはいかず、教室に早まる足を止めて職員室に入ると、4月の新年度からの方針について新任理事が偉そうに語っていた。新しい人物の参入は、計算されつくした混沌の中に好ましくないが、私の教室内の体制が崩されることなどないだろう。代わりになる生理の法を植えつけるわけじゃなし。
始業のベルが鳴って、ドアの近くに立っていた私は、一番に廊下へ出た。くだらない妄想を積み重ねる趣味はないが、嫌でも勇む脚は、9センチヒールとミニスカートですら、ワックスがけした床をも軽やかに進ませる。教室へ向かう渡り廊下のほうへ、バッグを抱えて進もうとすると、前のドアから立ちはだかるように影がさえぎった。
新任理事だ。
「どうも、はじめまして。」
相手してる暇はないの。無難にやり過ごそうと、挑発的な目線を送るでもなく、軽く目を合わせて会釈しながらそう言った。
「斎藤君だね、男子棟の担任の。」
「ええ。斎藤景子です。どうぞよろしく。」
男子棟の、といったとき彼のクチビルが歪むほどに力んだことに少なからずうんざりしながら、私は立ち止まった。教室に私を待つ、じりじりした顔の男子生徒がいるのを思うと、さすがに顔が曇ったのだろうか、私の顔色を見て理事は怪訝そうな顔をした。
「新任理事の堀内だが。」
ええ。存じ上げております。だから早くして。
「正式には4月から就任するが。今日から現場を見ようとおもってね。どうやら随分自由な教育方針なようだ。君の様な若い教師にも随分裁量権が与えられている。」
私たち二人の横を何人も教師が通りすぎていく。
「今の生徒たちは、壊れた体制の中でよりどころをなくしています。しかしながらこちら側、教師の側にも自身を持って与えることの出来るモラルの構築の用意はないのが現状ですわ。ですから、個人の裁量で最大限、生徒たちに働きかけていくのが必要じゃありませんか?私自身はこの学校の、教師への信頼には、満足しております。」
「なるほど。」
そのような応えは想定していた、といわんばかりの笑顔で堀内はにやついた。
「しかしながらどのような善悪の判断が可能か、は君の手にはおえないだろうからね。気をつけなさいよ。作り上げたものが壊れないように。まあ、これから僕は責任者として助言していくことになりそうだが。僕自身は現状を好ましく思ってないのでね。」
にやついた顔を正して言いたいことだけ吐き出すと、堀内は無駄に威厳を振りまきながら、秘書をつれて去っていった。
冗談じゃない。何を考えようとかまわないけれど、少ない朝の時間を割かせるなんて。わざとヒールの先で廊下をカツンとならせながら渡り廊下を急いで渡った。
「くっだらない。」
音にする気はなかったが、無意識に言葉がクチをついてでた。
教室に入ると、目立つ空席に心が弾んだ。時期に数人の生徒がやってくるだろう。死んだ魚のような目をして。打ち上げられたような魚のように弾んだキモチで。
席に着いた生徒や私が予測していたタイミングで、横山、原田、仲村の三人の生徒が教室に入ってきた。その瞬間まで私は彼らを迎え入れるためのもてなしをあれやこれやと思考していた。
私の支持を待つまでもなく、三人の生徒は教壇のすぐ下に、首を突き出した格好でひざまづいた。首を突き出すのは揃いの首輪を私があつかいやすいように、という気遣いだろうか。あるいはただ項垂れた振りをしたいのかもしれないが、それは私にとってはどちらでもいい。
私は三人の首輪に同じように紐を通してその先を束ねて持った。
「いい?新学期に遅れた罪が重いことを自覚するのよ。」
束ねて持った紐の先を、他のものにもみえるように頭上で掲げて教壇の椅子にすわり、見せしめ程度にそれをグッと引いた。
「じゃあ脱いでもらおうかな。」
三人の生徒に形だけのどよめきと躊躇が流れた。本当は、すでに勃起して、うずうずと待っているのが手に取るようにわかる。
「ゆっくり同時に脱ぐのよ。じゃあ下から。ほら、腰をうごかして。」
三人は同時に立ち、ベルトに手をかけた。三様の腰の振り方をしながら同じペースでズボンをおろしていく。
三人がほぼ同時に全裸になると、他の生徒たちが待ち構えたように机と机の間を話した。私は畜生を散歩させる要領で、三人を四つんばいにさせ、その間を何往復もあるいた。三人の生徒は丸出しの男根を強く勃起させている。
何往復もして三人の肌に汗が玉となって浮き上がってくるのを確認したあと、私はまず教壇から見て右側の後ろの隅に原田を引いていった。後ろに並んだロッカーの端に紐の先を結んだ後、四つんばいの原田の肩を蹴って足はしゃがんだ状態のまま、手を顔の横に上げさせ、性器を丸出しにする体性をつくった。相変わらず天井を向いた彼の性器の先は、汚い液体で濡れている。
その先の液体を払い飛ばそうと、私は彼の男根を手前から思い切り蹴り上げた。液体が散る。とがったヒール靴の先で裏筋をゴリゴリなぞると、原田はわずかに顔を歪めて、光悦の鼻息を漏らした。すぐに果ててしまうだろう。
もう一度蹴り上げた時点で、彼は敗北の吐息を漏らして、熱い液体を性器の先から勢い欲飛ばした。白い精液がだらしなく床に流れる。うなだれる彼を放置したまま、こんどは仲村の紐を引くべく、私は教壇にもどった。





