ドールスピーク

第3章 - 横山1

 原田がだらしのない精液を垂れ流して醜態を放り出したところで、先生は表情一つ変えずに教壇のほうへ戻ってきました。今度は仲村の紐を取るでしょう。例えば今僕がここでとんでもない粗相をしても、それは変わらないのです。彼女は状況に応じて的確に、もしくは感情的に行動するタイプの人間ではありません。無機質な法に、ただ機械的に服従するだけで、それは彼女の法に束縛される僕たちと、結局何もかわらないのです。
 予想通り、仲村は紐を引かれて、汚い穴を僕のほうに向けながら四つんばいで歩いていきました。原田が拘束されている側と反対の隅に連れて行かれます。おびえたような表情も、光悦の表情もけしてみせることなく、ただ安堵と心地よい緊張のみがそこにあります。紐の先がロッカーに結び付けられます。きっと先生は仲村におしっこをかけるのでしょう。そしてそれはおそらく一滴も床に滴ることなく仲村の胃の中に流れ込むのです。

 そもそも知的緊張感のない郊外都市で、マッチョなハーレム精神など、手に入れる必要も欲望も持たないまま、こんな歳になってしまいました。かつての少年漫画やおおくの動物たちの社会で、雄は角を突き合わせて戦い、勝者が雌を獲得していたし、そのあまりにわかりやすいマッチョなハーレム感に嫌気がさして、むしろ服従することの方がずっと楽だと、今はみんなが思っています。だからこのような教室があるのです。無機質で、まったく必然性のない法が、便宜性という言葉を超えて、毎分毎秒を支配している。なんて幸福なことでしょうか。
 先生はそのようには思っていないのでしょう。時々至福の表情や、不快な目つきをするから。僕たちのことを愛しているのだと思います。ひとたび立場が入れ替わってしまえば、おそらくなんの躊躇いもなく僕の尿すら飲み干すのでしょう。彼女にとって僕らとの関係は愛の関係なのだと思います。そしてこの教室の秩序を、僕らの間には唯一のものだと信じている、そういう可愛いところもあるのです。

 仲村の口を舌でこじ開けると、先生は自分のパンツを下ろしました。スカートが短いので前のほうをめくると、僕にもお尻が少し見えました。膝まで下ろされた水色のパンツは、くるくると脚にまとわりついているように見えました。仲村は無表情で口をポカンと開けています。でも、一人だけ先生の女性器がよく見える位置にいて、性的に興奮しないわけありません。僕からは見えなかったし、興味もないけれど、きっといつものように硬く勃起していたはずです。
 仲村の鼻がぴくぴくと動くと、先生は股を開いた格好のまま、ぴしゃりと平手打ちをしました。
「匂いが嗅ぎたいならはっきりお願いしなさい!」
「あの、いえ・・・」
「嗅ぎたいんでしょう?あたしのおまんこの匂い。」
「え、いえ・・」
「嗅ぎたいんでしょう?!」
先生は仲村の後頭部を掴んで、奴の顔を思いきり自分の陰毛の中にうずめたようでした。おそらく仲村はさらに硬く勃起したのでしょう。
 このようなばかげた光景は、僕らがひたすら規律に則している、支配されていることを実感する瞬間です。お約束のような台詞と性的興奮に、何も感じないけれど、自分のすべきことが用意されていることに心強さを感じます。残念ながら、もしくはたのもしいことに、間にある法はどんなものでもかまわないのです。僕らを無条件に牛耳るものであれば。
 鼻を赤くした仲村は、とても醜く、たくましく見えました。
「どんな匂いがしたの?あたしのおまんこは?」
「いい匂いです。」
「それを嗅いで興奮したのね?」
「はい。」
「じゃあオナニーすればいいじゃない。」
「はい。」
そう応えると仲村は、躊躇せずにベルトをはずして制服のズボンを下ろしました。よく見えないけれど、硬く勃起して先を湿らせたペニスを掴んで扱きだしたようでした。
「気持ちよさそうね。」
仲村はもう応えることもなく、口を上に向けてあけたまま、激しく自慰していました。
「じゃあ、いくわよ、」
先生がスカートをたくしあげ、自分で自分の性器を開くような格好をすると、仲村は目を閉じました。目を閉じてしまうとおしっこがどこに飛ぶかわからず、こぼしてしまうかもしれないのに。
 しばらくして先生のおしっこの出る音がし出しました。後ろ向きの先生の腰の裏のあたりからおしっこが飛び出しているのがわかりました。案の定、おしっこは仲村の口めがけては飛ばず、顔をつたい、床にまで滴り落ちました。それでも仲村は勃起したペニスをしごきながら、わずかに口に入ったおしっこを飲み干しました。
「ねえ、仲村くん、」
先生の声で我に返った仲村は、しごくのをやめ、口の周りについた液体を袖口でぬぐい出しました。
 バチン。思いっきり振りかぶって、先生が仲村の顔を、出席簿でたたきました。仲村は一瞬苦痛の表情を見せた後、床にこぼれた尿も、自分の服で拭こうとしました。
「誰が布で拭えなんて言ったの?!」
先生は興奮した様子で仲村を平手打ちしだしました。
「さあ、舐めるのよ、全部。床にこぼれたのも全部口できれいにしなさい。でもその前に」
そう言うと、仲村の後頭部を再び掴んだ先生は、奴の顔で自分の陰部を拭きました。
 されるがままにされ、言われるがままに床を舐めた仲村は、早くセンズリを再会したいのか、下半身をしきりに手でこすっていました。
「ダメよ。」
先生は怖い表情のままそう言うと、ツカツカと僕の方に戻ってきました。

 先生の、無理につくった無表情を見ていると、僕は時々笑いたくなります。笑いながら、殺してあげたくもなります。彼女の信じているものすべて、本当はなにもないということを証明してあげたいのです。でも、面倒くさいからそんなことはしません。せめて楽しませてやろうと、毎日遅刻してきているのです。そうすれば、僕だって束縛される自分の姿を確認できて、都合がいいのですから。
僕の目の前に来ると先生はパンツを脱ぎました。さっき膝まで下ろしたのと違って、脚を上げてすべて取り去り、それを手に持って回しだしました。
「遅刻が多いのね、横山君。」
「すみません。」

こうやってばかげた小劇場が今日も始まろうとしていました。そして僕も、始まるものだと思っていました。結局僕だって、寄りかかっている規律がなくなればいいなどと、思ったことはなかったし、なくなるだろうなどとは、まったく予想していなかったのです。

 教室の前の扉が勢いよく開きました。景子先生がスカートをたくしあげて女性器を丸出しにした瞬間でした。勢いよく開いたドアとは対照的に、じらつかせるようにゆっくり中へ入ってきた堀内は、挑戦的な様子で景子先生をにらみつけました。景子先生は同様をかくしてスカートをおろすのかと思ったら、同じように堀内をにらみかえしていました。性器丸出しで脚を広げて立ち、自分より20センチは背の高い男を睨み付ける先生は、特異な美しさを持っていました。